今週のお題「あんこ」
亡くなってずいぶん経つ、青森の祖母。
雪深い地方の家は、一つ目の扉を開けるとちょっとしたスペースがあり、家に上がる際、もう一つの扉がある。
そこはスパイクの付いたブーツや中が毛布のようになっているコートをかけておく場所になっていた。
私の記憶は30年以上前のものだから、もしかすると正確ではない。
だけど祖母はそこに石油ストーブをおいて、上に大きな鍋をおいて、小豆を煮てくれた。
水に浸った小豆は食べ物には見えなくて、「危ないから近づくな」と言われたけど、言われなくても興味なんて湧かなかった。
ところがしばらく経つと、甘くていい匂いが玄関からしてきた。
祖母が砂糖を入れてかき混ぜたあんこは美味しそうだった。
「熱くて食べられないから冷めるまで待て」と言われたような気がする。
だけどあまりにも美味しそうだったから、私は人差し指を突っ込んだんだ。
味見をしようと思ったんだろうな。
火は止まっていたし、そんなに熱いようには見えなかったんだと思う。
私の指は水ぶくれができた。
自業自得って言うんだよね。
「やるな」と言われたことをやったのだから私が悪い。
だけど祖母は泣きそうな顔でオロオロし、祖父が怒ったんだ。
「こんな危ないことして、やけどでもしたらどうするんだ!」
そうなってから、私は自分の軽率な行動を猛烈に後悔した。
(もう、おばあちゃんがあんこを煮てくれなくなるかもしれない・・・)
どうしよう、そんなの悲しい。
私のせいで何も悪くないのに責められた祖母。
私の喜ぶ顔が見たくて何時間もかけて準備してくれたのに、私の水ぶくれで悲しい顔をさせてしまった。
あの時のあんこは今でも私のNo,1で、これからもあれを超える味はないだろうな。